昔、アルバイト(期間工)で2回ほど学生時代と家業製造業時代の閑散期に自動車工場で働いたことがある。
1回目は塗装工程、2回目は扉の取り付け。
1回目は学生だったこともあり楽ちんな工程だったが、2回目は20代なかばということで責任ある自動車の扉の取り付けの工程に入ることになった。
というのも、配属先の希望を聞かれたとき「ハードな仕事でもいいです」と言ったこともあり、重い自動車の扉の取り付け作業に配属され、自動車の扉は20キロ程度の重さで、それを55秒に一台ずつ取り付けてゆく工程だった。
単純に売価を1台200万円とすれば、たったの1分でもラインを止めると、ホンダに200万円の損害が出る計算。
だからラインを止めることはその会社に迷惑をかけてしまうことになる、そんな責任の重い仕事だった。
はじめの1週間はオリエンテーションや安全対策などの勉強のほか雑務があり、残業はなく、寮に住み込みだったので、余った時間を自分が担当する扉の取り付けの工程を、予習で毎日1時間くらい見ることにした。
毎日1時間も見ていれば動作はだいたいおぼえるので、毎日寮に戻った後、その動作をずっと反復練習をしていた。
はじめはどうだったっけな、という感じだったけれど、次第に身体が勝手に動くくらい動作になれることができた。
工具をつかむ動作、運ぶ動作、そして取り付ける動作、全て事細かく予習をして、寮にもどって復習をくりかえしていた。
そして実際の作業工程に入ったとき、上長とサポートをしてくれる人がつきっきりでついてくれて作業を教えてくれる事になっていた。
けれど、1台目からそれほど問題無く動きができて、細かな作業だけわからなかったのでおしえてもらうという感じでスタートした。
5分もしないうちに自分一人でできるようになり、上長もサポートの社員さんもあっけにとられていた。
「前にやったことがあるのか?」と聞かれたくらい、スムースに作業ができていたようで。
「普通は慣れるまでに最低3日くらいかかるんやで」と。
毎日ずっと寮で動きをシミュレーションしてやってきたので、身体もおぼえていたみたいで、結局、サポートの社員さんが半日いたけれど、ずっと暇そうにしていて、そしていつの間にか消えていた。
自動車工場はきついという話をよく聞くけれど、個人的には非常に充実していた。
終わった後、残業を喜んで3時間くらいしたり、残業のないときは時々ジョギングしたりしていた。
鈴鹿サーキットの入場も無料で、よくアイススケートにも行った。
月40万円くらい稼げ、平日は3食つき、風呂もあり、相部屋だったけれど、もう一人の人とはシフトが違っていたからストレスもなく過ごせた。
寮長も優しく、食事もおいしく、だから思い出としてはとてもいい思い出になっている。
なつかしいな